美律子のさのさ

月が出るまで 半刻(はんとき)あまり
しのぶ恋路は 気もそぞろ
顔をそむけて 大川添いに
小股小走り いそいそと
ナニサ・ヨンヤサ
怪我をせぬよに 行かしゃんせ さのさ さのさ

河岸の柳に 夜風が絡む
じれて泣かせる 悪いくせ
紅を落として 島田をくずし
せめて一夜を 都鳥
ナニサ・ヨンヤサ
夢の波間で 揺られたい さのさ さのさ

赤い紙縒を 小指に巻いて
今日で十日も 肩すかし
茶断ちしてまで 住吉さまに
女ごころを 賭けたのに
ナニサ・ヨンヤサ
恋に上下は ないものを さのさ さのさ
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