水面(みなも)のフォーレスト

冬 森の奥 小さな湖
朝陽 枝の上で見覚める生きものは
はっと凍りついた水面に気づく

あわてないで 空も雲も
秘密の場所しゃべらないよ
赤く揺れるひいらぎの実
笑いかけておじぎをする

今日 特別に誰もが集まる
ずっと土の中に隠した食べものを
そっと毛皮の中 ポケットにいれて

遠い街の 鐘の音が
風にのって時刻(とき)をつげる
眠りこけたふくろうさえ
大さわぎに目を動かす

さあ夕暮れまで
手を休めないで
もう家の窓に
灯がともる頃

今夜 森の奥の小さな生きものは
ツンと凍りついた水面につどう

めかしこんだ白い羽根を
ふくらませて鳥が鳴くよ
赤く揺れるひいらぎの実
笑いかけておじぎをする

遠い街の 鐘の音が
風にのってイブをつげる
いつのまにか舞い散る雪
誰ともなく 指さす……
×