かもめの女房

白い牙(きば)むき出して 大波が砕け散る
哭(な)きつのる海風(うみかぜ)と 降りしきる雪
無邪気(むじゃき)なような 思いつめてるような
かもめをおおぜい引(ひ)き連れて
埠頭(はとば)で死ぬ気の女(やつ)がいた
俺(おれ)とあいつの 出会いを
かもめの女房(にょうぼう)と人は呼ぶ
何があったか あいつも言わね こっちも訊(き)かね
心の傷(きず)も あああ 背中の傷も…
それだけのはなしだ

あの冬が嘘のよう 穏やかな春の海
遠くにはサハリンが 霞(かす)んで見える
仕付(しつ)けの糸は あなた着るとき取って
仕立てた着物と置手紙(おきてがみ)
人の眼盗んで縫(ぬ)ってたか
お伽噺(とぎばなし)の 恩返し
かもめの女房(にょうぼう)と人は呼ぶ
何処(どこ)へいったか あいつも言わね こっちも知らね
しあわせならば あああ 吐息(といき)をひとつ…
それだけのはなしだ

かもめの女房(にょうぼう)と人は呼ぶ
何があったか あいつも言わね こっちも訊(き)かね
心の傷(きず)も あああ 背中の傷も…
それだけのはなしだ
×