檸檬 Lemon

庭に植えた檸檬の木が 少し大きくなって
春の風に誘われて 白い花を咲かせた
いつの間に時が過ぎて いくつ春を数えたのか
思い出だけがいつまでも 木漏れ日にゆれている

忘れないあの夏の日 二人で歩いた
森の中どこまでも 地図にない小道を
空に響く鳥たちの声 騒ぎ立てる小さいいのち
山から吹く風に乗って とどいてくる夏のざわめき

何ひとつ変わらない 何もかもあの日のまま
ただひとつあなたがいない それだけが夢のよう

街の灯に迷い込んで さびしさにとまどう
どしゃぶりの雨の中 涙が止まらない
あなたのいない夜も朝も ひとりきりのこの部屋で
同じように生きている 私だけがいる不思議
あなたのいない今日も明日も 窓を開けて陽射し受けて
言葉のない風のように 夢のつづき探している
夢のつづき探している

秋のはじめ檸檬の木に 小さな実がゆれてる
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