帰らぬ夢

お手紙は 女の名前で 下さいと
書かれた文字の なつかしや
弥生祭りの 短冊に
あの娘が添えた 口紅も
ああ いまはもう 帰らぬ夢

この指が 憎いとつねった あの女(ひと)の
想いは菖蒲の 花となり
水に咲くのか 中禅寺
昔のままに 晴れるとも
ああ あの恋は 帰らぬ夢

いろいろな 苦労をのりこえ 登るのが
人生だよと いろは坂
胸に刻んだ 哀しみも
ひと冬毎に 遠くなり
ああ 涙さえ 帰らぬ夢
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