麦と兵隊

「徐州々々と 人馬は進む
徐州居よいか 住みよいか」
酒落れた文句に 振り返りゃ
お国訛りの おけさ節
ひげがほほえむ 麦畠

友を背にして 道なき 道を
行けば戦野は 夜の雨
「すまぬ すまぬ」を背中に聞けば
「馬鹿を云うな」とまた進む
兵の歩みの 頼もしさ

腕をたたいて 遥かな空を
仰ぐ眸に雲が 飛ぶ
遠く祖国を はなれ来て
しみじみしった 祖国愛
友よ来て見よ あの雲を

行けど進めど 麦また麦の
波の高さよ 夜の寒さ
声を殺して 黙々と
影を落して 粛々と
兵は徐州へ 前線へ
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