お島・千太郎 つれ舞い道中

花と咲くには 春まだ浅い
風が身を刺す 峠道
知らぬ他国を つれ舞い道中
追手逃れて
お役者化粧
浮世芝居の幕があく エエ…幕があく

お島さん その若男那は
もうよしておくんなせェ

檜屋の千太郎は とっくの昔に死んだんだ
今の俺らは 只のしがねえ旅役者…

何を言うの若男那
それも これも 濡れぎぬを晴らすまでの辛抱じゃないの

そんな弱気な顔 お島は嫌いです
さあ胸のすくような 大見栄を切って
みせてちょうだい ねぇ 若男那!

俄か役者で 今日また暮れて
さぞやつらかろ 旅の空
流れ流れの つれ舞い道中
口でけなして
心で詫びる
恋のさだめはままならぬ エエ…ままならぬ

ほら見て 渡り鳥が飛んでゆくわ

明日は天下晴れて ふるさとへ帰れるのね
でもあなたはもう一度 檜屋の看板を上げる人
その時が お別れだと思うと お島は…お島は…

馬鹿を言うんじゃねェ
無事にこうして来れたのも
みんな おまえの 苦労のお陰

故郷に着いたら その時こそ
なあ お島 檜屋のおかみさんになってくれるな!

月にひと声 雁 啼いて
こころ晴れ晴れ 夫婦笠
命むすんだ つれ舞い道中
なびく幟も
日本一の
お島千太郎戻り旅 エエ…戻り旅
×