贄-nie-

どうか終わらせてよ 何もかもを奪って
痛みを 孤独を 喰らって

あの日のまま澱んでいた
暗い空虚な日々に差した光
泡沫の音 深い海の色

今も胸を抉る 付き纏う夏の匂い
忘れたくない それでもね

どうか終わらせてよ何もかも奪って
痛みを 孤独を 喰らって 枯らせて
狂わしいほど美しい愛で
弱さを 絶望を 攫って 叶えてよ

眩い程 輝いていた
心は沈んだまま
息が止まる
思い出が今も胸を染める

届かないまま 隠してしまった願い
果たせないのなら約束だなんて嘘だ

思い出して 本当の君を
笑いかけて あの日のように

消えない声が 温度が 夕焼けが 潮騒が
この心を繋ぎ止めている

全て終わらせるのはこの手なのでしょうか

望む明日を恨んだ 何もかも嘘でいいから

君よ叶え給え どうかこの身を裂いて
その手で、その欲望で満たして
麗しき生の果てへと導いて
血肉も心も喰らって

叶えてよ

もう少しだけ 待ってて

私は願う
ただ、ただ、
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