桜日和

隣の猫が死んだのさ
つやのある毛並みの三毛猫だった
桜並木の大通りを
横切ろうとして死んだのさ

隣の猫が死んだのさ
ぴんと髭をとがらせて
ダンプの走る大通りで
桜にまみれて死んだのさ

だけど猫は幸せだった
ダンプの運転手が
大きな体をふるわせて
ぽつりと泪を一粒
こぼしてくれたから

隣の猫が死んだのさ
仔猫を三匹残して
向こう岸のゴミ箱を
あさろうとして死んだのさ

隣の猫が死んだのさ
鼻をつんととがらせて
桜散る深夜の大通りで
ダンプにひかれて死んだのさ

だけど猫は幸せだった
ダンプの運転手が
しわの深い指先で
そっと小さな下あごを
なでてくれたから

隣の猫が死んだのさ
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