紀ノ川よ

紀州の女の 負けん気は
山椒のように ぴりりと辛(から)い
雨(あめ)風(かぜ)嵐(あらし)も 耐えたなら
天の恵みに なるのよと
母さん だれにも 見せない涙
呑んで流れる 紀ノ川よ

夕陽に染まった 母の背が
木枯らし吹けば まぶたに浮かぶ
心に誓った 夢ならば
何があっても 負けるなと
母さん その手で 送ってくれた
甘い蜜柑に 泣ける夜

極楽橋から 女人道(にょにんみち)
美(う)っつい春が 包んで香る
ふる里はなれて 暮らしても
こころやさしい 娘(こ)であれと
母さん つむいだ 尊い願い
乗せて流れる 紀ノ川よ
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