夏の夜の海

夜になった海は
波のひとり芝居
夢はあると寄せて
夢はないとかえす

暗い暗い海に
すべる白い船よ
どこへ どこへゆく
やさしい やさしい日々

遠い記憶をはこぶように
寄せる波は愛
裸足の下から 砂をけずって
逃げゆく波も愛

波は砂を抱いた
ぼくは君を抱いた
島の南風が
シャツの胸をゆらした

甘い記憶が ふくらむように
満ちる海は愛
かくした岩の 素肌を見せて
しりぞく海も愛

暗い暗い渚 海の中のホタル
ひとつ空に星 ひとつあるく影

暗い暗い海 深い深い海
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