アンニット

2月の風が春に傾いて空もぼやけだしてる
はじまりを告げるような季節が忌々しくなる

「君に似合うはず」と着させられた
赤い上質な服
鏡の前で何度も
似合ってる、と言い聞かせていたっけ

裾を折り曲げてみたり
袖を裏返してみたり
羽織って隠したり
嫌になったからもう脱ぎ捨ててしまったよ

諦め続けたことも
愛し切れなかったことも
いつの日か癒えるだろう
ベランダの青いシャツが風で焦ったそうに揺れる
君とまた何処へ行こう
空の色で

「君に似合うはず」と履かせられた
白い艶やかな靴
足元を見て何度も
似合ってる、と言い聞かせてみたっけ

潰れた踵の傷や
土埃の跡だって
綺麗に磨いても
大事にできないから脱ぎ捨ててしまったよ

諦め続けたことも
愛し切れなかったことも
いつの日か癒えるだろう

いつだっけ
喜びあって跳ねた夜
認められたみたいな気がしてさ
普通が普通じゃなくて
それで、それで、それで、えっと、なんだっけ
そうやって忘れていけるから
僕らは今日を生きられる

嬉しくて笑ったことも
悔しくて泣いたことも
いつの日か、いつの日か

諦め続けたことも
愛し切れなかったことも
いつの日か癒えるだろう
ベランダの青いシャツが風で焦ったそうに揺れる
君とまた何処へ行こう
空の色で

僕の色で
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