月よ 朧気であれ

「『なつ衣 きつつなれにし 身なれども
別るる秋の ほどぞ物うき』」

「弔いの歌か」
「あんたはなぜ歌う?」

「お主は、なぜ歌わぬ?」

なみだ枯れて
こころ渇き
嘆く声も掠れ

落ちてゆく
果て知れぬ 穴の底…

墜ちてゆく
まっくらな おとしあな…

憤りに似た
虚無感
悲しみに似た
驚き
涙にぬれた袖を
足元を
照らす容赦のない月
今宵くらいは
朧気であれ

「…なむあみだぶ……」

朧気で あれ…

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