天使入門

呼吸がどうにも止まってしまった夜を思い出して、
君に触れたいな。
開いた窓を覗いて泣いている。
私は可笑しくて、ちょっと笑いそうになった。
照れくさいな。

手を握ったり、花を添えていく。
窓は閉じられて、視界が暗くなって。
心の周りが熱く燃えている。
私は終わらないよ。
そっと目を閉じていく。

痛みの無いまま身体中が溶けていくのだ。
声は出せないが、
君の音楽が鳴っているんだよ。
鳴っていたんだよ。

私はいつからか私の人生が、
映画のように思えてきたんだ。
恋も失敗も全部が材料で、
なんともない毎日の隅に神が宿った。

涙を呑んだって、脚本は私だ。
思いつけばそのままに筆を取ってきた。
日毎増えるページ。
だけどそれも今日で終わりね。
最初で最後だ。
ノートを閉じた。

痛みの無いまま身体中が溶けていくのだ。
声は出せないが、
君の音楽が鳴っているんだよ。
鳴っていたんだよ。

光の射すまま、心だけが次の場所へ。
形はないから、君の音楽が鳴っているんだよ。

痛みの無いまま身体中が溶けていくのだ。
声は出せないが、君の音楽が鳴っているんだよ。
鳴っていたんだよ。
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