一葉記

想い寄せても 言葉に出せぬ
出せぬ言葉を 綴る文字
現世(うきよ)にごり絵 心の筆に
涙にじませ 紅をさす
恋の陽だまり 切り通し

明治は遠く なりにけり
大正も…… そして昭和も

人の真実と 釣瓶の井戸は
汲めば汲むほど 底知れず
帯の結び目 鏡に映し
女らしさを とり戻す
花のあの頃 たけくらべ

夢の不忍 あの夜かぎり
捨てて流した 一葉舟(ひとはぶね)
逢えば泣きたい 縋りもしたい
揺れてこぼれる 萩の露
月も入谷の 十三夜
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