いろはにほへと

桃の花咲く頃には きみは大人になるでしょう
風鳴夜も更けていく 紅月がのぞいている

今宵宴がはじまる 御囃子が聞こえてくる
髪結い紅を差したら 手鏡置いてゆきましょう

あられ あられ あられもない きみが おどる 人形のように
ほれて ふれて はれて ぬれて 隅の灯り 消して

色は匂へど 散りぬるを
天が堕ちて くるまえに
雛から雌鳥へ 羽化するわ
三月のお祭りを このまま 続けましょう

屏風を隔てて 眠っているのは 夢幻の彼方
美しき蛹 香る膜は 油か蜜か
皮膚をはがせば ケモノケダモノ
現を抜かして 言の葉 散らす

あられ あられ あられもない きみが おどり 疲れるまで
あれれ あれれ あれがほしい 浮世の着物 脱ぎ捨て

色は匂へど 散りぬるを
天が堕ちて くるまえに
雛から雌鳥へ 羽化するわ
三月のお祭りは かすかな しびれを残して
静かに 果てゆく
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