あなたの名前

まるで 取り柄のない言葉が
喉をつまらせては 流れてく

何度洗っても 落ちないほど
深い悲しみに 汚れたい

傷ついたり つけたり
いやしたり
できないのは もっと辛い

眠りについた横顔を
確かめながら
呼んで 呼んで あなたの名前を呼んで
左手 握りしめた
転がり込んだ この胸は
身代わりでいい
泣いて 泣いて 泣いて
こぼれ落ちた 恋の欠片
拾い集めても
あなたには 返さない

いつか 海が見たくないかと
なぜか 私を呼び出したよね

このまま あの場所へ連れてって
淡い温もりに おぼれたい

また 次の恋すれば
いいじゃない
別れ際の あまのじゃく

振り向きざまに
情熱を 蹴散らしながら
呼んで 呼んで あなたの名前を呼んで
右手を 空に上げた
まとわりついた
残像を 砕けないまま
泣いて 泣いて 泣いて
そして あなたは私の
壊れそうな胸に
ナイフを突き立てる

笑わせたり お茶したり
食事したり
違う意味で 会いたいのに

始発の前の 誰もいないホームで
呼んで 呼んで
あなたの名前を呼んで
また夜が明けてゆく
家への道を
いつものように 歩けば
泣いて 泣いて 泣いて
忘れようとする度に
名前呼ぶ度に
また好きになっていく
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