女子大小路のあの店で

抱きよす肩に降り染めた
秋の雨よりまだ細い
あの日のおまえの黒髪が
きゅっとこの胸しめつける
あゝ水割りをため息と飲みほした
女子大小路のあの店で
夜遊び上手のふりをして
今も心は純だろか

小指の先で口紅を
そっとなおしてほゝえんで
うその顔よと手鏡に
ひとつえくぼを映しだす
あゝいつからか面影が夢になる
女子大小路のあの店で
一人でいいのと目をふせて
今も横顔淋しげか

夕陽の色と日暮と
桔梗の花が好きな人
恋にかすれたうわさなど
きっと聞くまい聞こえまい
あゝ幸せは来るはずと別れたが
女子大小路のあの店で
グラスのお酒をころがして
今も涙に酔う人か
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