春ノ嵐

通りに咲く薄紅 風揺れる凛とした横顔
不朽の名画に惹かれるように
視線が他に行き場をなくした

吹き抜けて散らした花が一つ
淡い香りを残してそっと頬を撫ぜる

透明な風に乗って 胸を駆け回る君に
この心も奪われそうで
前触れなく吹き荒んで
眩い光放つ其れは 春を待つ僕の元に巻き起こる

通りに舞う薄紅 水溜まり染め上げた花弁
どれだけ考えていても
この想いが僕を追い越すばかりだ

月に並べた 目蓋の裏側焦がす君
熱が胸を叩く 頬を紅く染める

壮大な景色だって 側にいてくれないのなら
この胸から何も生まれない
いつかは全部消え去って
灰となる運命だとしても
もう一寸 その笑顔を見ていたいだけだ

信じちゃいなかった
運命も必然もその手の温かさも
抱き寄せて奪い去る、まさに其れは
春を呼ぶ嵐

透明な風に乗って 胸を駆け回る君に
気付いていた もう戻れない
戻れなくていい

透明な風になって 胸を吹き荒らす君に
この心を奪われている
気付いてたんだ 僕だって
初めて抱くこの想いを込めて
僕しか知らない名を付けた
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