夜警

真っ赤な眼の高層ビルがまばたきしている
夜をこするように立つ
不出来な世界を腐している

輝きなんてひとつたりとも無い生活が
灯す明かりの群れが綺麗だね

鼓膜の奥の奥の奥まで
浸すぬるい音の無い夜
甘い匂い、誰も幸福に飢えている
凍りつく野生の常夜灯
千日手に陥る世界
引き分ける相手もいないよ
誰もいない
誰もいない

みんな眠っている
幹線道路も、恋人の肌も
みんな眠っている

だらだらと終わっていく最中の景色
僕らは緩い滑り台の上

視界の先の先の先まで
ぼかす淡い幸福のベールで
盲いた僕らは可能性を手放した
機能しないアミグダラ、下垂
トーラス都市の放射冷却
どろり粘る風が吹く前に
逃げだしたい
逃げだしたい

鼓膜の奥の奥の奥まで
浸すぬるい音の無い夜
甘い匂い、誰も幸福に飢えている
凍りつく野生の常夜灯
千日手に陥る世界
引き分ける相手もいないよ
誰もいない
誰もいない

悲しくない?
寂しくない?
虚しくない?
途方もない現実の葬列、葬列、葬列、葬列
×