アンサンブル

「止まないね…」
外は酷い雨。

約束をしたね。
君が宿る傘になりたいよと。
穴だらけにされ雨漏りの酷いボロ傘だけど。

シトシト街は音を奏で、君の息遣いすらもアンサンブルに。
僕は2人をテーマに書き下ろし、”砂上の楼閣”と名付けた。

汚れた指で打ち込んだのは傑作とは云い難い稚拙な詞。
こんな僕からかけられるのは一方的なラブソングしかない。

「土砂降りになるよ」
優しさと見せ掛けた悪い嘘。
無邪気な邪気が君を閉じ込めろと囁くんだよ。

シトシト街は音を奏で、君の息遣いすらもアンサンブルに。
まるでバラードを口ずさんでいるみたい。
それはそれは綺麗で見惚れた。

汚れた指で汚さない様に触れそうで触れない距離を保った。
はみ出す肩を濡らしてるのはこの雨のせいだけじゃない。

届かない。

止まないで…。
僕は願う。
そんな酷い事を願う。
嗚呼神様、罰を下して欲しい。
-さぁ、綺麗な虹を空に架けて-

汚れた指で打ち込んだのは“あと少しだけ君と居たいな”。
こんな僕からかけられるのは一方的なラブソングしかない。

折れるまで唄う。
あぁ、ダメだ、もう泣きそうだ。
折れるまで…。
虹が架かって静かに息を引き取る。

ーーーーーーー止まないね…

外は酷い晴天。
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