錦秋譜

色づく紅葉(もみじ)の千代紙が 立派な表紙絵も
過ぎ去る月日のまにまに 褪せた日記帳
私が生まれた朝から 柔らかな文字で
欠かさず五年綴られた 育児の記録です
お見通しですね お母さん
母を知らずに母になり とまどう娘を
助け舟 千のメッセージ
こんなに愛されて いたんだと
私は親として 何を残せるか
そばで見ていて くれますか
いつも朧(おぼろ)げな 母の横顔が くっきり微笑んだ

疲れて寝た子のあったかさ 抱(いだ)けば思い出す
やさしく広い膝の上 ふりそそぐ木漏れ日
頬っぺと頬っぺをくっつけて 暮れてゆく景色
あなたといつか見たような そんな気がします
不思議なものです お母さん
子供時代をもう一度 生きているようで
ぬくもりに 逢いたくなったら
日記を辿(たど)ります 何度でも
笑顔は宝もの 失くさないでねと
声が聞こえる 風の中
短い縁(えん)でも あなたの娘に 生まれてよかった

そうねわかります お母さん
我が子を想い手をあげる 手のひらの痛み
真っすぐに 育って欲しい
泣く子を涙ごと 抱きしめた
私は親として 何を残せるか
ずっと見ていて くれますか
あなたの分まで 全てをかけて 愛を綴りたい
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