ペトリコール

僕の夢 浅ましい
どうせ終わる おはなし
人波の まにまに
微かに君を感じた

東京の夜は冷たいね
色のない傘を差して
嫌でも独りになってしまうから
目を閉じたんだ

好きだったよ ずうっと

君の涙の味さえも
ゆるやかに過ぎた梅雨の日々も
そのすべてに愛を感じたこと
僕はまだ忘れられないまま

可憐に咲いた紫陽花も
その葉に微量の毒を持つと
話した君が泣いていたのも
何故かまだ忘れられないまま
生きている

高尚なものではなくって
歪な部屋に並んで
じとつく外を眺めてはまた愛をしたりさ

それだけで よかった

君の小さな優しさを
肥大化させて抱く虚しさを
されど言えなかった本当のこと
君はついぞ知らないまま

さよならだけを置き去るよ
生臭い暮らしの流れにそっと消えてしまった恋心を
僕はただ忘れたくないから

ああ

僕の夢 浅ましい
どうせ終わる おはなし
人波の まにまに
確かに
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