王国

歪んだ王国に ぼくたちは住んでる
歪んだ鏡を守っている
歪んだ王国の歪んだ鏡に
ぼくときみだけが まっすぐにうつる

広間にさしこむ 日射しの角度は
凍りついたように幾千年 動かない
ほかに誰もいない ふたりだけの国で
ヒスイの玉座に きみをそっとすわらせて

やさしく きみの目に 目かくししてあげよう
白い首筋に キスをあげよう

歪んだ王国に ぼくたちは住んでる
ほかに住めるところが ふたりにはない
ここでだけ ガラスの美しい花が咲き
泉は歌い 風はまどろむ

広間の地下には 巨大な迷宮
ひとすじの光も 射さない闇の底
死者のざわめきと 身もだえ泣く声
錆びついた仮面と 砕かれた時計たち

だけど きみは何も 知らないままでいい
ふるえて お休み ぼくの腕の中で

翼ある鳥は 翼をもぎとれ
世界へと続く 通路をとざせ すべて
そして ぼくたちは 王宮の床に
輝く偽りの歌を 刻みつけた

『きみを永遠に ぼくは愛しつづける
きみだけを ぼくは愛しつづける』…
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