風花の宿

雪になれなれ 海にも積もれ
明日の出船が 止まるまで
添えぬあなたと分っていても
思い切れずに すがりつく
窓にひとひら ああ 風花の宿

これが最後の 短い一夜
せめて燃えたい 燃やしたい
濡れて冷たい 湯上がり髪を
梳かす鏡の やせた手に
櫛が重たい ああ 風花の宿

燃える漁火 泣く潮騒の
海に別れの 朝がくる
眠るあなたを 起こさぬように
音をしのばせ 結ぶ帯
未練ひとひら ああ 風花の宿
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