御幸橋

夜明けの前の薄闇の
遥かに灯る梅の花

月は伴穴のように動かない

小枝を咥えたカラスが一羽
欄干からそっと宙に刺さる

月は鍵穴のように動かない

浮腫んだ流れは中洲を齧り
もろとも山影の横腹を打つ

月は鍵穴のように動かない

進み行くには気が遠く
引き返すのは気が重い
油の切れた口笛が
力なく風から剥がれ落ちる

月は鍵穴のように動かない
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