あっかんべ、だぜ故郷

鈍色の海を縁取りひしめく工場群。
痛ましいほど絶え間なく、果てしない律動。
散々、風に弄ばれた挙句、結局、雲のわずか手前で力尽きる煙突の煙。

列車は関節を軋ませながら、過去、現在、未来を事細かに縫い合わせる。
不発弾のような危うい気まずさに、やがて車窓から視線を引き剥がす。

俺はこの街の嘘を知っていて、この街は俺の嘘を知っている。
上手くやれるはずがないだろ。
あっかんべ、だぜ故郷。
当て付けのように痩せ細った雨。
青痣のようにぼんやり滲みゆく街並み。
片手に下げていた喪服を、ひそひそと胸に抱き寄せる傘の下。。

ここからだからこそ焦がれに焦がれた夢。
しかし、ここにいる限り叶えようがなかった夢。
故郷。。

俺はこの街を見放して、この街は俺を見放した。
ただいま、とでも言うと思ったかよ?
あっかんべ、だぜ故郷。

俺はこの街の嘘を知っていて、この街は俺の嘘を知っている。
上手くやれるはずがないだろ。
あっかんべ、だぜ故郷。
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