夏の鉄塔

空を見上げたら
雲が飛ばされてく 来た道の方へ

君は「思い出したの」と
背中で泣き笑った 南風よけて

遠い雨 乾いた風
くたびれたペダルの音

大人になるたび
忘れた宝箱 ワザとだったけど

「連れて行ってよ」って
偉そうに僕を見た まじめな目で

通り雨 冷まされてく
跳ね降りた君の背を 眺めている

錆びた鉄塔の向こう側 誰の物でもない場所
君は颯爽と駆け出した
僕の声、風に混ざってく

遠くなる 君の姿
僕はそこへ行こうか 悩んでいる

錆びた鉄塔の向こう側 誰の物でもない場所
君は颯爽と駆け出して
風に乗る、僕を残して

それは鉄塔の向こう側 誰の胸にもある場所
僕はゆっくりと引き返す
雨上がりの畦道を

ここは鉄塔のこっち側
何を僕は泣いてるの?

君は鉄塔の向こう側
風になる、全て忘れて
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