今日だけは。

くたびれた上履きが
今日はなんだか軽やかだ

傷だらけの机が
ラピスラズリの石碑のようだ

今日だけは雲が懐かしいのは
鳥だった頃を思い出してるから?

今日だけは。
ノートのページのように舞い落ちる蝶も
二階のトイレの個室のようなカテドラルも
下駄箱から降る埃のような粉雪も

そう、今日だけは
背を向けて黙す三十九人の天使も
私のずぶ濡れの髪のようなオフィリアも
君が接吻をくれたあの丘のオリーブも
今日だけは。

階段を蹴る足取りが
今日はなんだか軽やかだ

錆び付いたフェンスが
透き通った硝子のようだ

今日だけは空が美しいのは
星だった頃を思い出してるから?

今日だけは。
箱庭のような校庭を覆う薄暮も
終幕を祝う黄金のトランペットも
緋色の斜陽を寿ぐ西の山々も

そう、今日だけは
宵の明星を翳める東の夜鷹も
黄昏れを侵す蒼ざめたカタルシスも
からだを包み込む一面の彼岸花も
今日だけは。
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