その手錠を外す前に

ねえ ぼくのお城にきみを閉じ込めて
独り占めしてもいいかな
もう誰の手にも触れさせやしないよ
そしてぼくはきみを壊した

明かりを消して
その心に触って
何度も気持ちを確かめた
はじめは緩やかに
徐々に欲望(おもい)のままに
そしてきみもぼくを壊した

鉄格子から漏れる光がきみの胸を照らす
まだ続けてたいな
ふたりきりのミュージカル
感情的なアドリブと
官能的なソルフェージュ
きみはぼくにとっての逸材だったのに

その手錠は外せないよ
とけない愛の呪文を唱えてあるから
いつも優しくて笑顔が似合うきみが好きだった
好きだったんだ

もしもあの時ぼくと出会わなけりゃ
もっと幸せになれたのかな
もつれたふたりのマリオネットは
今夜もシーツのステージでダンス ダンス ダンス…

どこでそんな演技(あそび)覚えたの?
言ってごらん
ぼくのきみじゃないきみは
もうきみじゃないから
もう何も言わないで
答えを言葉にしないで
これがきみの望んだラストシーンならば

その手錠を外す前に
ひとつだけ教えてくれないか
きみとぼくを繋いでたものは何だったんだろう
この鎖だけじゃないはず

さよならを言う前に
もう一度だけ分かってて欲しい
ふたりで過ごしたたくさんの時間は嘘じゃなかったと
嘘じゃなかったと

ぼくのきみじゃないきみは
もうきみじゃないから
さよなら
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