冬の忘れ物

もうそれはきのうの事
なみだの音をいくつ聞いたでしょう。
まどでも開けて、
風にあたったら、笑ってみましょう。
もう春だから。

若い女の子はきれいです。
半そでから出た手がはずかしそう。
生まれたばかりの木の芽の様に、
まぶしくって……
もう春だから。

何もかもがきれいにみえる。
私は冬をまとった忘れ物。
水にひたしても
清まることはない、この心
もう春なのに。

私をおいて行かないで!
悲しみはまくらの中にしみこませたから……
暗い冬から引きずり出してほしい
この手を引いて、鏡の中から……
もう春なのに……
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