春は母胎である冬の亡骸を食んで健やかに
白い毛皮を砂と太陽に汚す幼い獣
危篤を彷徨い落ちた山茶花たちの見る夢が
泥に変わり果てた故郷を発つ

牙を揃えても 血の味を覚えても
無垢の罪なら雨が洗い風が乾かすだろう

今 鏡のようなグラウンドへ落ちた朝が
すぐに僕らの影も拭い去ってゆくのだろう
ただ君の名前を叫んでみたい大声で
でも真空の世界に許された揺らぎはなく噤む
幾千の花言葉を借りて有り余る沈黙と

まだ食欲は絶えない
嗚呼残酷な唾液が
止め処なく溢れ出して

今 砂塵の中で写真機を構えた僕に
きっと君の姿は捉えられはしない
空を仰いだレンズ

夜が眩しい
君の身体にこの世界はもう狭い
次に君が眠りから覚めると僕はいない

今 君の手にした答を知るんだ僕は
目を覆いたくなる程に美しく食い尽くしてよ
ただ君の名前を覚えていたい最後まで
ほら真空の世界に許された揺らぎが一つ
歌う その旋律に合わせて君は命の限り踊る
そして薄れゆく思い出に宿る 次の春の命が
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