女と鴎

逢う人もなく 波止場は暮れて
こゝろに帰る 船もない 船もない
あゝ私の胸に この淋しさを
残して行った 人は誰

約束も無い 港の恋を
命と想う 悲しさよ 悲しさよ
あゝ波止場にひとり 取り残された
錨も船が 恋しかろ

一羽の鴎と ひとりの私
話相手は 波ばかり 波ばかり
あゝ男の恋は ひと夜の情け
女の恋は 死ぬ日まで……
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