東京しぐれ

おまえ残して 三十路で逝った
おふくろさんの心残りは
俺が果たすと決めたのさ
小窓をたたく 東京しぐれ
その瞳(め)の中に あゝ からだの中に
面影宿した いちず花

白く咲くのも ためらうように
俯きながら咲く百合の花
恥じらうお前 抱きよせた
あの日と同じ 東京しぐれ
今さら惚れて あゝ なおさら惚れて
さだめを重ねる いちず花

イヤというのは ただ一度だけ
別れてくれと言われたときよ
俺を見上げる目が潤む
二人を濡らす 東京しぐれ
尽くせる今が あゝ 倖せですと
寄り添い甘える いちず花
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