予感

オリンピック中止のニュースすら
聞こえないくらい恋してた
開かない海の砂浜で
横顔に見惚れていた

彼氏がいたっていいから
内緒は綺麗になっていくから
叶いはしない でも構わない
居心地に甘えていた

君と笑っていた
なぜか僕は少し切なくて
これが夢なら覚めないでそう願っていた
電話を待っていた
僕からはかけない約束だ
恋人に飽きた日だけ愛されていた

和食 タイ料理
割高の商品 帰り遅くならないように
隣に居たくて ダメともわかってる
ソーシャルディスタンスなんてことにしないで
助手席 僕に頷いてる
用意した 台詞も話せずに
人気のない路地で君が先に降りた

じゃあねと別れた後
いつも僕は少し我慢してた
振り返れば辛いのも分かっていた
誕生日が迫っていた
君が彼に怪しまれないものを
探している自分が二番目と気付いていた

誰もいない体育館
卒業の合唱をしよう
花壇のフリージア摘んで胸に刺そう
去り際に君が言う
「またね。」すらも響いてしまうくらい
静かな今夜を過ごそう

「大事な話があるの。」とラインがきた時に
すでに良い予感と悪い予感が揺れながら襲ってきた

「結婚するんだ。」って受話器越しで君が泣いていた
僕は「おめでとう。」としか言えなかった

本当は分かっていた
僕たちが結ばれないことも
君が話したいことも 終わり方も

オリンピック中止のニュースすら
聞こえないくらい恋してた
開かない海の砂浜で
横顔に見惚れていた

渡せなかったプレゼントが
まだ部屋に残っていた
僕は今もあの夢の中
君からの電話を待ってる
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