五月晴れ

「父上にお目にかかれるまでは、母上、死んではなりませぬぞ!」

母の病を 癒やすため
弓で捕えた 雁(がん)一羽
死罪覚悟の 仕置き場で
新三郎が 夢見るは
まだ見ぬ父の 御尊顔(ごそんがん)
いずこにおわす 父恋し

宝三種を 見せたれば
覚えあるぞと 撫でさすり
新三郎の 顔を見て
口元目元 姿さえ
昔のわしに そっくりじゃ
ほそめた殿の 目に涙

「口には出さねど父上と、心で一度呼ばせてくだされませ」

よくぞ立派に 育てたと
母の名を呼び 手を取りて
親子の絆 認むれば
もらい泣きする 娘あり
花びら受けて 山陽道
晴れ晴れ歩む 笠三つ
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