The Reason To Dance

「いってきます」なんて恥らいながらも希望からめた声が
玄関から聞こえてきたもんだからさ
「いってらっしゃい」ってそれがあたかも日常だったように
平静を装って返事したんだ、けれども
たったいま交わされたやりとり、なかったんだよ何年もお互い
この先訪れないってほんとうにほんとうに
もつれて絡まった関係だったはずが戻ってきたんだ
夜は「ただいま」「おかえり」っていうあたりまえの暮らしが

きのうよりもっと唄う鳥も あつまりはじめたんだよいま
きのうよりもっと唄う鳥も 弾んでくテンポいい会話がほら

1.2.3.とリズムを掴んだら 腰をあげて片付けしていた部屋に戻って
A.B.Cから並んだ本棚の ほこり雑巾でふき取りながら軽く踊って
ムーディーなピアノがラジオからスイング
つられて洗濯までできそうな休日ってことは
good enoughなふらつきで 午後からもいい予感がするよなしないよな

きのうよりもっと唄う鳥も さわがしくなってきたね
きのうよりもっと唄う鳥も 躍動をはじめたからさ

左から順番に握手する手と
右から鍵盤にタッチする手
心の羅針盤が示す方角で
ローカルとアーバンは交わって
探してる答えはここにない
ハグしてる支えはただの期待
読みかけの本のページない
産みかけのアイデアのゲージは倍
「向かう 移動 集う
きっとそれは光る希望なのかもしれないよ
ふとした理由がわからない
ちょっとした理由がわからない
意図した理由がわからない
ここにいる理由がわからない」

なんて昨日の夜きみは、
喉のなかに詰まっていた、ことばふりしぼって
壁にぶちまけ、ふりみだしたんだ
ふるえた声は美しいほど人間らしくてさ
やっときみが生きてるんだなって実感、あのときしたんだ

きのうよりもっと唄う鳥も だからきょうの一日はあれさほら
きのうよりもっと唄う鳥も いつもと違うんじゃないかって

きのうのことばを考えながら、久々に座るキッチンのテーブル
あのとき、きみは奈落の底を見つめながら
「インターネットにでまわってる手垢にまみれた格言で
慰めようとするのはやめてくれ」と投げすてた後、疲れた顔して

ぼくが泣いている理由なんてわからないだろう

って、最後つぶやいたんだ。

なにいってるんだ

泣いているきみのそばにずっといた理由がわかるかい?
この先これからも泣いているきみのそばにいるだろう理由、
そしてこれまでも君の泣き声を沢山聞いてきた理由が、
わからないからこそ寄り添い続ける理由が。

おたがいがことばに出来ない理由が。じっくりと時間をかけて示す理由が。
もしわかるなら、だったら答えはでるだろう
これからぼくらがダンスフロアへ踊りだす理由もわかるだろう

さあ、そこからさ、

玄関をでたきみは 通りに出て、道を辿る。
街をみつけ、人並みをみつめ、四つ角でいずれ、足をとめるだろう。

地図を眺め、坂をあがり、広場で休み、足取りを速め、
ダンスフロアへと向かう。
踊ることは、今をつかみ、夢中を知る。

やがて疲れ、夜がくれば、戻っておいで、明かりのついた、玄関の方へ。
そしてきみは、扉をあけて、日常のなかで、
「ただいま」と投げかけるだろう。
そしたらまた、あたりまえのように、日常の声で
「おかえり」って、投げ返すだろう。

生活はいつも、まばたきの間、時間をとめて、人それぞれの、
バラつきを与える。
だからぼくらは、言葉を投げて、リズムをあわせる。
眠ったり、起きたり、笑ったり、お互いのリズムを、確かめあって、
きみのそばで、踊る理由を考えてゆくんだろう。
「ただいま」「おかえり」っていう、あたりまえのリズムで。
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