セントエルモ

気づけば失くしてたほどのちっぽけな灯火が
あの水平線の向こう輝いている
形だけの日々を過ごすことに精一杯だった
僕はそれを見えないようそっと隠していた

こんな惨めで情けない僕を誰かが呼んだんだ
振り返ってみてもそこに誰もいないけど
嘘にまみれた雑踏で 擦り切れた価値観で
夢の名残に縋っている 亡霊のようだ

器用さ身につけるほど
本当の僕は薄れてく そういうものさ
それなのに、この鳴り止まぬ心臓の意味を
どうか教えてくれないか

訪れることのない夜明けを待った
幽霊船はまだ揺られているのだろう
そして夢の欠片抱くまま
何時か水底に忘れられるのだろう

転ばないよう俯いたまま歩くようになって
そんな僕を君が見たらどう思うだろう

誤魔化すような笑顔で
昨日を台無しにするのは もう止めにしよう
灯りが無くても 何を頼りにすればいいかは
分かっているはずだから

辿り着くことのない場所を目指した
幽霊船はまだ帆を上げているのだろう
ボロボロでも選んだ航路(みち)だ
きっと僕らは同じだと気付いた

近づくほど遠くなる答えでも
確かなものをそこに感じたんだろう

だから 選び取ったこの航海で
舵を取るのは僕以外にいないんだと
ありのままの心が言うから
僕は僕のまま君を迎えに行こう
僕らの夜明けがそこで待っているんだ

幽霊船がまだ夢を巡るなら
×