一冊の本

あなたに借りた 五木寛之
今ごろ読む気に なりました
また逢う口実 作りたくて
返すためにだけ 借りた本です
あなたの愛は さめはじめ
秋へ秋へと 急ぎ足
ぼくは夏の思い出を
かかえたままで 立ち止まる
本をあなたに 返さなければ
本をあなたに 返さなければ

男と女の 愛と憎しみ
二人によく似た物語
栞をはさんで 本を閉じて
甘い哀しみ たのしんでます
あなたはまるで 風のよう
あとも見ないで 走り去る
ぼくはまるで 石のよう
思い出重くて 動けない
本をあなたに 返さなければ
本をあなたに 返さなければ
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