永遠のマドンナK

子供の頃、とほい面影。
母が心に抱いていた
大きな綺麗なチョコレットの
ペーパーボクス
船乗りだった父が洋行帰りに
持ち帰った
ハクライの函には、若き母の
夢の如き肖像フォトが
しまわれていた。
遠い還らぬ日々と人と
異国の海と邦にはせた、
幼き心の彩られし日々。
そして、そのポートレートたちの中に一葉の
何とも不可思議なブロマイドが
Kと云ふイニシャルを抱いていたのです。

Kと云ふイニシャルだったね
想えば哀し はつ恋のひと
キネマの銀の絹の嵐をくぐりぬけて
今日からバルセローナへ
翔んで行くのよって
哀しく微笑み仄かに消えたよ

Kだから云ったじゃないか
三つの蕾に一つは薔薇さ
約束は約束さ きっと守るよって
約束は約束さ きっと守るよって
あいくるしい耳許にささやいたはずだよ
約束は約束さ きっと守るよって
約束は約束さ きっと守るよって
頬寄せ、指切り 由故なく泣いたよ
キネマの銀の絹の嵐をくぐりぬけて
それでも僕は行くよ エデンの東まで
Kと云ふイニシャル追って
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