小夜時雨

ぽたり ぽたり 滲んでゆく
乱れそめにし 我ならなくに
積もり 積もる 想ひ積もる
今宵の夢続け 時よ止まれ

ながながし夜は女泣かせだよと
人知れず待つは恋し後ろ姿
忍ぶれどもう隠せぬ牡丹色
契りは何処(いずこ)へあてもなく彷徨(さまよ)う

指先触れる花びらに 言ノ葉乗せて空へ
朝靄(あさもや)かかる山並みが
嗚呼 恨めしく思う このまま永久(とわ)に
泡沫(うたかた)の夢

ぽたり ぽたり 滲んでゆく
乱れそめにし 我ならなくに
積もり 積もる 想ひ積もる
今宵の夢続け 時よ止まれ

夜の帳(とばり)が静寂(しじま)に揺れている
月夜(つきよ)に唄えば闇に想い消える

嘆く心殺めましょう 遠い記憶は空へ
ほさぬ袖口恋調べ
嗚呼 乱れ髪濡れる 憂い繕って
上弦の月

ぽたり ぽたり 滲んでゆく
乱れそめにし 我ならなくに
積もり 積もる 想ひ積もる
今宵の夢続け 時よ止まれ

流す涙は小夜時雨(さよしぐれ) 夜明けあなたを待つわ
独り濡らすは恋模様
嗚呼 この身焦がすほど 想い咲きぬる
楽園の花

ゆらり ゆらり 沈んでゆく
物思いふければ 嘆かわしい
ひらり ひらり 灰のように
舞い踊り焦がれて 降り積もる
ぽたり ぽたり 滲んでゆく
乱れそめにし 我ならなくに
積もり 積もる 想ひ積もる
今宵の夢続け 時よ止まれ
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