影の問答

「風景画のように、時間がヘッドライトの先の雨粒の中に停滞してて、
それが急に放電を始めたから、
眠るのを忘れた。そんな夜のこと?」

「日曜の小さな部屋のソファの下や、
臆病な子供が影を隠して過ごしたピアノの下にも、
何かがありやしないか?眠るのを忘れて昨日聴いたレコードが廻る訳も、
ほとんどそこにある気がする。」

―― 二つの影が伸びる仄暗い少し減速し始める街で、
痙攣していた白い街燈が微睡む夜明けの頃の出来事。
×