日めくり

西陽がやさしく影を伸ばす
細い裏通り 学生通り
ふたりで見つけた狭い部屋の
窓ガラス 染め乍ら
春の陽は暮れた

昨日は昨日で 忘れてきた
“今日”それがすべてだった
泣きながらお互いの頬をぶった
信じていたから悲しかった

もしもあの時 少しだけでも
もしもあの時 お互いに譲り合えたら

唇をかみながら まとめた荷物を
今 故郷へ送り返した

煙草の焦げと 涙の染みが
ポツリ ポツリ 残る 畳を拭いた
あの人は今頃 また何処かで
飲んで 砕けて 梯子酒

明日は明日で暮らして来た
“生きる” それがすべてだった
日めくりを破いて 裏に書いた
“さよなら”の代わりに“愛してた”

もしもあの時 出て行く人の
もしもあの時 後姿にすがりつけたら

ドアの柱 日めくりを画鋲で止めて
今 故郷へ…
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