盆の酒

初めて迎える 親父の盆は
蝉が騒いだ 年だった
今でも忘れぬ 大きな背中
線香つけて 提灯ともし
思い出肴(さかな)に 盆の酒

頑固(がんこ)をつらぬく 証(あか)しの皺(しわ)は
男の歴史だ 勲章だ
酔うたびいつもの 口ぐせだった
気づいてみれば おんなじ道を
歩いているのさ 盆の酒

川面(かわも)にいくつも 灯篭(とうろう)揺れて
別れを惜しむ 夏がゆく
笑った親父の 面影うかぶ
真っ直ぐ生きろ… 聞こえた声に
心で交わした 盆の酒
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