二十三夜

「ごめんなさい」そう言うたびに
あなたは 微笑み許してくれた
「ごめんなさい」いつしかそれが
あなたに甘える 言葉になって
「ごめんなさい」それだけ書いて
あなたの部屋から 出てゆきました

二十三夜の 夜もふけて
あれから 覚えた煙草をすえば
ああああ……
心にそっと 煙が入る

「愛してます」声を出さずに
あなたの背中に 何度も言った
「愛してます」言葉に出せば
すぐにもよごれる 言葉のようで
「愛してます」さよならのあと
絵葉書の隅に はじめて書いた

二十三夜の 虫の声
ちぎれて 鳴らない風鈴だけが
ああああ……
夜風にそっと 揺られています

二十三夜の 虫の声
ちぎれて 鳴らない風鈴だけが
ああああ……
夜風にそっと 揺られています
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