海の町

羽をもがれた夜光虫の様に、私は地面を這いずって。
君をなくしてもお腹が空くことすらなんだか嫌だった。
怖かったものも全部、どうでもよくなった。
君がくれたニット帽をまだ持っている。

ベッドの上、涙を堪えて。
君が私に言ったような
「ずっとここに居て欲しい」
って、言葉が私は何よりも怖かった。
ありがとうもまだ隠し持ったまま。

海風が吹いた潮の町で、君のことを探している。
ねえ、バス停セーラー服、後ろ姿を錯覚した。
記憶に残らなきゃ、記憶に残らなきゃって。
馬鹿みたいに繰り返したよ、君を愛してるって。

少しずつ日々が薄れていって、言葉選びが上手になった。
今じゃ君にあの子の影すらも匂わせることはないな。
それでもまだ奥の方、あなたが息づいていること。
君は知らないままでいい
知らないままでいい。

苦しかったこの残像すら、美しい記憶になった。
今が嫌になる程に、まぶたに焼きつくほどに。
こんな私の戯言なんて海の底に沈めばいいのに。
ずっと言葉を書き連ねたんだ、また会いたくて。

もう、会えないな。
あの日々で歌えてた歌も、今じゃ歌えなくなった。
君がずっと「行かないで」と泣いて居たこと、涙の水溜りにだって
気づいて居たんだ。

海風が吹いた潮の町は君のことをどう変えた?
涙が降った日もずっと君を見てた。
今更会いたいな、これまでの私を伝えたくなった。

海風が吹いた潮の町の君のことを歌っている。
どんな空の下、君は笑ってるの?
あなたに会いたいな、今でも愛してるって。
変わらないままの心の形をあなただけに歌えたらいいのに。
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