曲がり角

一番古い記憶は 優しい海を泳いでた
それは母の中だった 海が満ちる頃だった
入り口なのか 出口なのか
光を求め 角を曲がった

幼稚園に上がる頃 母親に手を引かれて
家と園の行き来だけ 限られていた世界
紋白蝶は 迷子の誘い
愛しい君と 角を曲がった

父親との思い出は あの日が多分最後で
自動販売機の前で 百円玉貰った
オレンジジュースに 手が届かない
私を横目に 角を曲がった

学び舎を飛び出せば 次の群れが手招いて
何処へ行けど世の中は 出来不出来の徒競走
周回遅れと バレたくなくて
ゴール手前で 角を曲がった

見渡せばこの世には いくつもの角があり
似たような道伸びている それでも人は歩いてく
一体私は あと何回
道の先を 曲がるのだろうか
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