ふたりに春が

陽を浴びてプラタナスが
新しい芽をふく春
彼と私の間の
わだかまりが消えたの
淋しさに凍えていた
唇を赤く染めて
彼の広い胸めがけ
ぶつかってゆくの

長い冬だった 私達の恋は
悲しい噂を聞いていくたびも泣いた

愛される倖せより
愛するその苦しみを
私は今選んだの
自分のこの手で――

足もとにのびる影も
やわらかく感じる春
彼と私の間に
何事かがおこるの
疑いに曇っていた
灰色の瞳をあけ
彼のひらいた心に
飛び込んでゆくの

暗い冬だった 私達の恋は
信じている事だけがただ救いだった

愛される倖せより
愛するその苦しみを
私は今選んだの
自分のこの手で――。
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