少女のための残酷童話

水面に映った
自分の顔に
恋したナルシス
あなたになりたい

大事な鏡は
他人の瞳よ
誰より可愛い
わたし映して

競って華やぐ靴で
少女たちは舞うの
大人は眉を顰める
派手な赤い赤い靴
軽やかに跳ね

いつもどんな場所でも
踊りつづける
わたしはここよ

美しい箱の
マッチを売るわ
灯す間だけ
大切にして

少しも似合わぬ服を
娘たちは纏う
生き急ぐようなふりで
少しでも甘い蜜の
時をながらう

満ち足りた微笑みの
奥の心は
家なき子でも

死ぬまで脱げない靴を
わたしたちは履いた
教会の床で躍る
罪の赤い赤い靴
倒れてもなお

愚かなる魂が 持てぬのは何?
尊い教えなんか
この世界のどこにあったの?
わたしを止めて

答えなど欲しくない
老いていくだけ
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