月夜宿

愛しあい 愛しあい
からませた糸も
心ふたつを結んで切れた
思い出染まる 山間の
秋を訪ねた 女には
唇寒い 月夜宿

片割れの 片割れの
月さえもいつか
丸くなる夜が また来るものを
湯煙りしみた 思い出に
肌を浸せば 尚燃える
残り火むなし 月夜宿

人の世の 人の世の
不しあわせ嘆き
添うに添われず 他人で生きる
独りの旅の 淋しさを
酒の情けに すがる夜は
せせらぎ咽ぶ 月夜宿
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